どうすれば
お客様の目線に立てるか。
その難問に答えるために、
私は働きつづけたい。

2002年入社

"国内営業"

藤井 貴子/TAKAKO FUJII

本田技研工業(株) 日本本部 販売部
国際文化交流学部 国際コミュニケーション学科 卒業

Hondaとは、
チアリーディング
である。

学生時代は部活に明け暮れた。種目名は、チアリーディング。技の正確さ、完成度、難易度、連続性、スピード感・・・を競う。“応援する”というスポーツでありながら、“魅せる”演技で多くの人を魅了する。そこに私も魅せられた。出場する大会で与えられる時間は2分30秒。自分だけがパーフェクトに演じられても意味がない。チーム全員で一糸乱れぬ演技ができてこそ価値になる。みんなで演技を一からつくって喜び、エールを送るために試行錯誤を繰り返しながら喜び、そして、人々に元気や勇気を届けて喜ぶ。そのために、練習!練習!ひたすら練習!4年間はあっという間に過ぎていった。

そんな私が、なぜHondaを選んだのか。「世の中の役に立てるモノづくりの世界で、商品企画の仕事がしたい」 そう思った私は、メーカーに的を絞って就活をスタート。企業研究をしていたとき、Hondaが大切にする“三つの喜び”という理念を知る。商品やサービスを通じて、共感や感動を覚えていただく“買う喜び”。お客様との信頼関係により、携わる人が誇りと喜びを持つことができる“売る喜び”。期待を上回る価値の高い商品やサービスをつくり出す“創る喜び”。私はビビッときた。「お客様とは観衆で、商品やサービスとはまさに演技で・・・・・・チアリーディングと同じだ!」 Hondaと自分が“喜び”でつながった瞬間だった。

入社して11年、ずっと本社で営業畑を歩んできた。配属先は、日本営業本部。四輪の販売台数を上げ、国内シェアを拡大するための方針や施策を打ち出す。そして、全国に700法人・2500拠点以上あるHondaディーラーと共有する。いわば、収益を確保していくリーディング役だ。プレッシャーは大きいけれど、やりがいはそれ以上にデカい。ただ、配属された頃の私は、クルマに詳しくないフツウの女子。運転も、教習所以来したことがなかった。「いかにお客様の目線に立てるか」 振り返れば、それがずっと私のテーマだった。そして、これからも変わらないと思う。“喜び”を与え、自分も得るために。

やり遂げることで、
一歩一歩、お客様の
目線に近づいていける。

最初に勤務したのは、営業本部にある地域事業企画室の“事業管理”ブロック。国内の収益を管理する“経理部門”ともいえる部署だった。膨大なデータを集め、分析し、販売促進策のアイデアにつなげていく。ディーラーに支払われる販売助成費(インセンティブ)の管理も仕事の一つだった。・・・とはいうものの、私はめっぽう“数字”に弱かった。「とにかく頼まれたことをやり遂げよう」 仕事に振り回されながら、必死に食らいついていった3年間だった。

その後、私は隣にあった“本部企画”ブロックに異動した。営業本部がどんな戦略で、どんな目標に向かって走ろうとしているのか、全国のディーラーに示す“上位概念”をつくる部署だ。販売方針、営業企画、組織体制・・・。そのプランを策定し、実行し、評価し、改善する。PDCAを徹底的に繰り返し、営業本部の一員として付加価値を生むこと。それが私のミッションだった。「自分がやり遂げたといえる仕事をつくろう」 一念発起。何とか一人前になれた3年間だった。そして、7年目に突入。私にも、ついに“その日”がやってきた。

「藤井、そろそろ行ってくるか?」 本社の営業部門に配属された人間には、通る道がある。通称“販社トレーニー”。ディーラーに出向し、実際に“お客様にクルマを買っていただく”プログラムだ。期間は2年。何を現場で学び持ち帰るか、それは本人次第。自分の仕事は、自分で決める。いかにもHondaらしかった。私は自分に2つのミッションを課すことにした。一つ目は、高い新規来店成約率を残すことで、お世話になるディーラーの収益確保に貢献すること。そしてもう一つは、お客様の声を可能なかぎり拾うこと。営業本部に配属されて以来、常にお客様のことを考えて仕事をしてきた。ただ、実際に向き合ったことは一度もなかった。販社トレーニーは、“お客様の目線に立つ”滅多にないチャンスだった。

なぜHondaで働くのか。
答えは、現場に出て
みないとわからない。

「店長、営業に行ってきます。電車で行ってもいいですか?」「なに言ってんだぁ!売りモノに乗らずに行く営業がいるかぁ!!」 7年目を迎えても、ほぼペーパードライバー。私は前途多難な新人だった。配属されたのは、Honda Cars東京中央の北池袋店。地域の大型旗艦店で、試乗車のラインアップも都内随一。免許から“オートマ限定”を解除して、来店されたお客様の獲得にのぞんだ。買っていただくことは大事。ただ、納車後に“サービス来場”してもらうことも、すごく大事。半年に一度の点検に、繰り返しやってくる車検。お客様とコミュニケーションをつづけることが、その後の“お乗り換え”につながるのだ。過去1年間に一度も来店がなかった顧客リストを見ながら、1件1件あたっていった。「当分買うことはないから」「Honda?けっこうです」 良いイメージを持っていない方も当然いた。ただ、そこは人間同士。一生懸命ぶつかれば、思いはいつか伝わるもの。「熱意に負けました。ハンコ押します」「藤井さんから買いたいからHondaにするよ」 最後は、私のことを信頼して買ってくださる。それがいちばん嬉しかった。逆にいえば、信頼を失うことがいちばん悲しいこと。今でも忘れられない出来事がある。

あるお客様に、オデッセイを買っていただいた。会社を経営されている方だった。商談を一生懸命つづけるうちに意気投合。お互い気軽に身の上ばなしができるほど信頼関係が築けていた。手続き上、お申込金を入れていただきたいと伝えると、「じゃあ直接もっていきますよ!」 その日はアポイントで外出することになっていたので、私は別の営業スタッフに引き継いだ。そして当日、お客様は約束どおり訪れ、店に戻った私も確かに受け取った。しかし・・・あろうことか私はそのことを忘れ、電話をかけてしまったのだ。「藤井です!お申込金、いつ持ってきていただけますか?」 温厚だったはずのお客様は豹変した。「えっ?わざわざ持っていったじゃないかぁ!」「ふざけるんじゃない!!きみの会社は一体どんな教育をしてるんだぁ!!!」 すぐ店長に事情を説明し、一緒にご自宅まで謝罪に。ただ、返ってきた言葉は、「キャンセルさせてもらいます」だった。当然だ。しかし、クルマは発注済。ナンバーの登録準備も進めていた。成約率を上げるどころか、ディーラーに多大な迷惑をかけてしまう。悪夢も一日寝たら忘れてしまうポジティブ志向の私でも、このときばかりは引きずった。眠れない日々がつづいた。

私はその後も足しげく通い、誠心誠意アタマを下げつづけた。お客様の“気持ち”を大切にできなかったことを、私は謝りつづけた。そして・・・「わかった。もういい。で、私のオデッセイはいつ届くんだね?」 今回だけは、と許していただいた。大きな問題を乗り越えたお客様ほど、不思議と“長くて太い”信頼関係ができたりする。それも、営業本部の中にいては得られない気づきだった。お客様の気持ちを知らない販売施策に、説得力はない。販売方針に、ついてきてくれるディーラーはいない。つくづくそう思った。本社に戻った後、私の仕事の質や精度は確実に上がったと思う。販社トレーニーは、自分の人生にも気づきを与えてくれた。子どもを授かって育児休暇をもらい、昨年職場に復帰。託児所に預けて仕事をしながら、ふと考えたことがある。「なぜ私は働いているんだろう?」 答えを探したけれど、それはキャリアアップのためでも、贅沢な暮らしをするためでもなかった。「自分の存在価値を示したい。社会とつながっていたい」 お客様の気持ちを考え、行動し、そして買っていただく。全てのプロセスを一人でやり遂げたからこそ、見つかった答えだと思う。